Casa Pancho







Casa Pancho
その夜3軒目のドアを開けた頃には、夜のいい時間になっていた。
チャーミングなホテルフロントが勧めてくれた店のひとつ、このバルがなんともよかった。
料理が美味しくて、店員が陽気で、客が溢れていて、とにかく活気があって。

ピンチョス。
小さなポーションでいろいろなチョイスがあって、独り旅でもアレやコレやと愉しめる。
しかし、まぁ、全体的に、味が濃くて塩っぱい。
バルなんだし、お酒を飲ませるためのツマミなわけだから、それはそれで理にかなってる。
美味しいんだけど、とにかくお酒が進む、すすむ。
短時間で酔っ払いの出来上がり。
効率がイイといえばいいのか?

外にでると、少し肌寒くて、雨に濡れたタングステン色の古い町並みはキレイだった。

次の夜、このバルの前を通りがかったとき、スタッフが手を振って手招きする。そのフレンドリィな笑顔に2晩続けてこの店で食事することになった。
いい店だった、な。

Pamplona







パンプローナ

アーネスト・ヘミングウェイ「日はまた昇る」
1960年代、奈良原一高「スペイン 約束の旅」
どちらにも、サン・フェルミン祭(牛追い祭り)が重要なモチーフとして描かれている。

パブロ・デ・サラサーテ。
10歳のときにはスペイン女王の前で演奏を披露したこともある、超絶技巧の天才ヴァイオリニストであり作曲家。

そして、チェーザレ・ボルジア。
塩野七生「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」
惣領冬実「チェーザレ 破壊の創造者」

このあたりが、僕にとってのパンプローナのすべて。
しかし「チェーザレ 破壊の創造者」ようやく12巻。
綿密なストーリィ、美しく丁寧な画はとても素的。そのためなのか、ストーリィがなかなか進まない。。。

チェーザレは、その人生の最期にこの城塞都市を訪れる。
彼が16歳で司教に任命された街。
旅路の果て、美しく小さなこの街は、彼の瞳に一体どのように映ったのだろうか。
惣領冬実氏は、その風景をどのように描くのだろうか。
早く続きが読みたい。

R.I.P.



砧公園の南側にある駐車場にクルマを駐め、公園の中を通り、北側にある美術館へ、のんびり歩いてく。
静かに降る細い雨、吐く息が白く舞う冷たい空気、人影ほとんどない公園。

「奈良原一高のスペイン ー約束の旅」
世田谷美術館の企画展。

ウィークデイの午後、美術館をゆっくりと観てまわる。
パンプローナ、グラナダ、マラガなどスペインを中心とした氏がヨーロッパに滞在していた時期に撮った写真展。
そこは、僕が生まれる以前のスペインだった。

雨の午後、美術館を後に、ふたたび公園を歩く。
人影まばらに彩度をなくした風景、動くものはなにもない。
近くにある東名高速道路のノイズをディフューズするように雨が降っていた。

R.I.P.
この企画展の会期中に亡くなられた、奈良原一高氏のご冥福を祈ろう。