BMW M440i xDrive Gran Coupe






BMW M440i xDrive Gran Coupe
4シリーズの4ドア・グランクーペ (G26) を借りだして、3日間、距離にして約500kmほどを走らせることができた。

BMWのクルマって、歴代モデルをそれぞれに試乗程度に走らせたことはあるけど、友人のBMWのサイドシートではなくって、自身でステアリングを握ってそれなりの距離をじっくりドライヴしたのは初めてになるかな。。。

Dセグメントのサイズ感で、ベースになるのは3シリーズ。以前から3シリーズには4ドア・セダン、5ドア・ツーリング(ワゴン)そして2ドア・クーペ、あとオープントップのカブリオレがラインナップされていたのだけど、前モデルのF型から2ドア・クーペを独立させて4シリーズとしてあらたにラインアップを増やしてきた。
それもひとえに同じジャーマンブランドのアウディが、A4派生のクーペスタイルのスペシャリティをA5シリーズとして展開したから、それに対向するためにBMWは4シリーズをリリースしたんだと思ってる。

で、2代目となった4シリーズ・グランクーペ。先にリリースされてる兄弟モデルの3シリーズとは、その見た目、そして乗り味もけっこう印象が違ってる。
先代のF36型に比較して、ワイドにロングになりボディが大型化しているのは、まぁ、セオリー通り?正常進化なのか?

ジャーマンスリーのDセグメントのなかで、BMWのクルマが一番スポーティだというイメイヂが従来からあった。
それは “駆け抜ける歓び” のスローガンに込められたスポーティネスに拘ったBMWのクルマ造りのフィロソフィーとそのマーケティングに依るところが大きいのだろうと思うけど、バラスト積んででも、なにがなんでも50対50にこだわる前後重量配分や、元気のいいエンジン、ハードめなアシ廻りのセッテイング、そして引き締まったボディ、ちょっとチープな内装・・・
そんなBMWのイメイヂがF型から少し変化し、G型と呼ばれるこの3・4シリーズは明確に変わったように感じる。大きく、伸びやかに、豪華に、、、つまりメルセデス・ベンツやアウディと一緒じゃん・・・

それは他社の同セグメントのモデルに対向するための変化、そういうことなんだろうか?

まぁ、それはそれとしてこのG26型、440i Xdrive グラン・クーペを走らせる。
今どきな液晶メーターパネル、太いステアリング・ホイール、タイト目なホールドのシート、確かに、わかりやすくスポーツを演出してるんだろう。
そしてシルキー・シックスと称えられる、B58型、3.0リッター直列6気筒DOHCターボチャージド・エンジン。
このエンジンは速い。
もちろん、S58型と呼ばれるM専用エンジンには較べるまでもないんだろうけど、そのベースとなるこの3リッターエンジンはよく奔る。

どちらかというと、大きく重くどっしりとシックでコンフォートな雰囲気を纏っている剛性の高いシャーシは、そのポテンシャルの高さとは別に、サイドシートにご婦人を乗せて、ショーファー・ドリブンよろしくマッタリとした ドライヴを許容する。
だけど、このB58型エンジンは、軽い回転フィールでどんどん速度を上げていくし、そして気がつけばちょっとイロイロとヤバいゾーンに達していたりする。
そこはちょっと気をつけよう。。。
19インチのホイールにピレリのスポーツ系のランフラット・タイヤがなんとも。そんなハード寄りなセッティングにみえるアシ廻りだけど、これが意外にもしなやか。
けっこうゴツゴツするんだろうな、なんて思ってたけど、そのイメージに反して案外乗り心地悪くない。

これは後から聞いたハナシなんだけど、この車両にはアダプティブMサスペンション(いわゆるセミ・アクティヴ・サスペンション)が標準装備されているらしく、この電子制御式の可変ダンパーを持つサスペンション・システムがいい仕事をしているらしい。

これが “駆け抜ける歓び” をうたうBMWとして、スポーツするラグジュアリーのためへの回答、それがG型モデル、そういうことでいいのか?

あとADAS関連は、今どきのレベル2。
ではあるけれど、自動で50mほどバックしてくれたり、高速道路でステアリングから手を離すことができたり、いろいろと制限付きではあるけれど、BMWならではという特徴をだしてきている。
便利機能はなければないでなんとかなるけど、あるにこしたことはないかな。実際夕方の高速道路の渋滞に捕まったとき、ステアリングに手を添えていなくていいのは、それなりに、まぁ楽だった。

このあたりはメーカーによってできることや、その制御に多少の違いはあるけれど、コンポーネントを供給しているサプライヤーや各国のレギュレイションによって、今後も進歩していくはずだろうし、というか、クルマが進化していく方向としては、ゼロ・エミッション化とインテリジェンス化しか当面ないだろうから、現時点での中途半端さを嘆いても仕方ないし、あったらあったで便利だね、くらい鷹揚にかまえておくのがいいんじゃないだろうか。

あるとき写真を整理しているなかで、当初このクルマに感じてたい違和感の正体らしきものを掴んだ。
このグランクーペ、ボディの上下方向に厚みがあり、クーペというより、最新のトヨタ・クラウンにも通じる“クロスオーバー” 的なファットな雰囲気を持っているように感じる。
つまりクーペというには、なんというか、その、まぁ、ありていにいってしまえば “デブ” にみえるんだね。

これは、4シリーズの2ドアクーペがモデルチェンジしたとき、先代からすると大きなクルマになったな、といった印象だけだったのに、それから遅れて1年ほどしてアナウンスされたグランクーペの写真をみたときに感じた、ん?、なんか感じが違うな?
あらためて、2ドア・クーペとこのグランクーペ、そしてBEVのi4のスペックシート、ついでにアウディ・A5シリーズのソレを詳細に比較してみると・・・

ああぁ、そいうことか、この違和感が自分的に腑に落ちた。
つまりグランクーペは、2ドアクーペの4ドア版ではなく、i4のICE版だということだった。

現代のDセグメントのスペシャリティとして、このG型グランクーペはそつなく良くできたクルマに感じられる。
その独特なメーターデザインや、サイドのキャラクタラインの位置や、なぜかフラップタイプになったドアハンドル、そのちょっとなんというか、チャビイなボディや、イロイロと不満はある。
だがしかしだ、それら不満のどれもがとても些細なコトに思えるほど強烈なのが、あの巨大なフロントグリル。
“バーティカル・キドニー” とBMWが呼ぶグリルデザインがリリースされてそれなりに時間が経った、いつか時間が経てば慣れるかも、そうポジティヴに思おうとしたこともあった、、、しかし、やはり僕には受け入れることはムツカシイ。

とてもいいクルマなんだけどな。。。

Audi A1 Sportback 35 TFSI S Line







Audi A1 Sportback 35 TFSI S Line
アウディのラインアップの中で最もコンパクトなモデル、一般的にBセグメントにカテゴライズされてるクルマ。
そんなクルマを3日間、市街地からはじめて高速道路、ワインディングを約350kmほど走らせた。

そのコンパクトなボディサイズのおかげで都心の狭い道路や渋滞時のハンドリングはすこぶる良好。
1200Kgプラスの車重に、150PS/250Nmを発生する1.5リッター、ガソリン・ターボ・エンジン。高速道路を含め常識的に走らせるにはなんの不足もない。
ワインディング・ロード、それこそ中低速タイトターンがメインの日本のワインディングだと、このサイズのクルマはクルクルとストレス小さく走らせることができる。
とはいっても、そのコンパクトなサイズからくるネガティヴ・ポイントがないわけではない。
17インチのホイールに扁平率45%のタイヤ、バンピーな路面でのビビットな突き上げやバタつき、トレーリングアームなサスペンション・システムの特性相応、まぁ、こんなもんなんだろう。
でも、それってサイズなりのサスアーム長やコストの制約によるセグメントなりの特徴といっていい範囲のものかもしれないので、最終的にクルマに何を求めるかによって変わってくるポイントといっていいのかも。

どれほどディジタル・テクノロジーが進化していったとしても、セッティングだけではどうにもならないところはあるんじゃないかなと。
物理的な制約を超越することができない、と僕は思ってる。

3代目TTからはじまった “ヴァーチャル・コクピット” も新しい世代になったのか、いくぶんハイレゾリューションになってグラフィックも現代のトレンドに沿って、よりフラットデザインになってる。
ヘッドライト、テールライトのストロボライン、シングルフレームグリル、ルーフ・エンド・スポイラーといったコスメティックのシャープなデザイン、 ドア・インナーハンドルやダッシュボード、コクピット周り、すべてディテイルが一つのコンセプトに従ってデザインされていて、このコンパクトなクルマに統一感を与えている。
別の見方をするなら、こういうのがブランドとしてのコストのかけかた、なのかな。

とはいっても、かつてのアウディ・スポーツ・クワトロをオマージュしたといわれるフロントボンネット先端部のデザイン、それはアウディがイメージしたほどのインパクトはないんじゃないかと思う。
というより、なんのギミックもないスリットなんかただのアクセントにもなってなくて、それならいっそ、なかったほうがいいんじゃないか。

あと、ADAS関連のドライヴァー・サポートは、時代なりレヴェル2をクリアしていて、今どきの装備。
しかし、“quattro” (4輪駆動)が設定されていないのは アウディとしては片手落ちだろ?

100年に一度と表現されるクルマ社会の変革期において、テスラを筆頭としたニューカマーに対向するために、従来からあるブランドがそのヘリティジに依拠したモチーフを用いるのは、それなりに理解はできる。
新興ブランドは逆立ちしてもそんな演出できないからね。

・・・だけど、それでも、 “技術による先進” をスローガンに掲げるアウディには過去の遺産に頼るのではなく、新しい何かのアプローチを期待してしまうのは、ココのクルマに2台続けて乗っている僕の願望なのだろうか。

いずれにしても、MQBシャーシになったこの2代目、初代A1からそのデザインコンセプトを大きく変更して、他のアウディ・ラインナップとの整合性を図り、ロー・アンド・ワイドにシャープなクルマになった。
ボディとルーフのカラーを塗り分けたバイカラーもソレを際立たせてる。

個人的な嗜好でいえば、先代のデザイン・アプローチのほうがイイかな。。。

Renault Megane R.S.






ルノー メガーヌR.S.
ドイツのニュールブルクリンクにおいて、量産している前輪駆動車で最速の称号を持つ。
そんなハイパフォーマンスなフランス車をワインディングで思い存分走らせる機会を得た。

Cセグメントの2ボックスカー、それにパワフルなエンジンを載せ、ハイチューンのアシ廻りを奢った、所謂 “ホット・ハッチ” と呼ばれるカテゴリィのクルマ。


“オランジュ トニック M” というカラーコードを持つ、すこうしくすんだオレンジ・ボディ。
19インチの “INTERLAGOS” ホイールは、なんとなく初代アウディ R8のホイールに似ているような気がする。
アルカンタラのスポーツシートは高級感の演出というより、より実益にフォーカスしていて好み。
チープなカード・キィを受けとって、エンジンをスタートさせる。
センターマフラーからソレなりに勇ましいエクゾースト・ノートが如何にもハイパフォーマンス・カーです、って主張してる。

6速DCTのギアボックスをDにシフトして走りだす。
ワインディングに向かう、市街地を交通の流れに合わせて、フツーのスピードで走らせているだけでも、アシ廻りの良さを感じることができる。
もちろん、高荷重のハードなセッティングなんだろうけど、フリクションなくよく動いて街中の小さなギャップをそれほど不快に感じることなく、いなす。

やがて山にたどり着き、センターコンソールに設えてる “RSボタン” をポチッとしてスポーツモードを選択すれば、エクゾースト・ノートがたちまち勇ましくなる。
誰も走っていないワインディングを一気に加速していく。
最初はセレクターレバーを “D” レンジに固定したまま、峠道を行ったり来たり。
そして身体がクルマとコースに慣れてきたところで、パドルシフトを駆使して、自分のタイミングでギアをアップ&ダウン。
どちらかといえば、中高速のコーナーが続くこのワインディングを数往復。

ああ、いいなコレ。
走らせていてとても楽しい。

1.8リッターのターボ・エンジンは、暴力的というほどではなく必要充分なパワーとトルクをピックアップよくデリバーしてくれる。
6速ツインクラッチなギアボックスはクイックでクルマのキャラクターによく合ってる。
マクファーソンストラットをベースとしたサスペンションは、ハードな部類のアシ廻りではあるけれど、しなやかによく動く。
そのアシ廻りには、ブレンボのブレーキシステム、オートバイのそれのようにコントーローラブル。
トルクベクタリング電子制御ディファレンシャルがいい塩梅に効いてるのか、ハイパワーFFであることを特に意識させられることもなく、とにかくニュートラルでステイブルによく曲がっていく。

4輪操舵システムの恩恵はよくわからなかったけど、走行性能イノチなこのクルマに採用されるくらいだから、アシストしてくれてるんだろう、きっと。

そのムカシ、3代目ホンダ プレリュード。
世界初らしい機械式4WSが搭載されていて、先輩の紺色プレリュードを運転させてもらったとき、狭い路地にある駐車場に停めようとして、その動きのヘンさ加減に、ビックリしたもんだ。
たぶん、アレ以来だな、4輪操舵システム搭載のクルマをドライヴしたのは。。。

フランス車の例に漏れずといっていいのか、プラスチッキィーでチープなインテリア、そっけないディスプレイシステム、クラスからすれば、思いのほか横幅がある車体、その分グラマラスでカッコイイんだけど、意外に重い車重。

そのあたりのことを受け入れることができたなら、もうコレでいいんじゃない。
走ることを愉しむことに、これ以上何が必要なんだろう?
ポジティヴな意味で、そう思った。