Audi A7 Sportback 40TDI quattro






Audi A7 Sportback 40TDI quattro
アウディにおけるEセグメントのスペシャリティ、4ドア(5ドア)クーペ。
同じアウディのDセグメントであるA5シリーズは、2ドア、4ドア(5ドア)、カブリオレ(オープントップ)とバリエイションがあるのに、A7は4ドア(5ドア)クーペのみ。とはいっても専用設計というわけではなく、ベースになるのは同じEセグメントのA6シリーズと、エクステリア以外のほとんど全てを共有してる。
このあたりが、他のジャーマン・ブランドのラインナップと較べると、アウディの弱いところかな。
まぁ、Eセグメント以上のクラスになるとカンパニーカーとしての定番のセダンと今どきのSUV以外は、どこもそれなりに苦労しているようにみえるし、そのなかではメルセデス・ベンツがリードしているのだろうけど、BMWはもとよりAudiはなかなか苦労してるんじゃないだろうか。

何はともあれ、A7 Sportback 40TDI quattroを3日間ほど、350km程度の距離を走らせる機会を得た。
どうやら、日本に導入されている最も廉価なモデルらしい。
シャシーはおなじみ “MLB Evo” 、ギアボックスこれもおなじみ7速 “S-tronic(Dual Clutch Transmission – DCT)” 、エンジンは以前走らせたAudi A5 Sportback 35 TDI advancedと同じ2リットル・ターボ・ディーゼル。
ただしスペックは車体の大きさというか重さに配慮してか、それなりにパワーアップしてる。
とはいっても、204PS / 40.8kgmのパワー&トルクなので、1850kgの車重をドライヴするには非力といってもいいかも。

走らせてみると、そのスペックどおりといえばいいのか、全体的にマッタリなフィール。
僕にとってのアウディのリファレンスはB8世代のA5 sportback 2.0 TFSI quattro。
それは単純に最初に所有したアウディであり、6年あまり歳月を共にした相棒だったから。
これが、340PS / 51.0kgmを発生させる3リッターV6エンジンを積んだ55 TFSI quattroだったら、また違った印象になったかもしれない・・・

Eセグメントというクラスなりに求められるフィールってある。
それはアウディに限らず、メルセデス・ベンツやBMWでも同じことだと思う。
つまり、Eセグメント以上のモデルは所謂高級車のカテゴリィとして扱われているような気がする。
高級車って何?って聞かれると、ちょっと口ごもってしまうけど、まぁ、平たく言えば、自分(ドライヴァー)以外を乗せて、というか、リアシートの居住性にも快適性にウエイトを置いているかどうか、そういうことかな。

つまりショーファー・ドリヴンとしてのクルマの存在ということではないかと。
もし、そうであるとしたら、このA7 Sportbackをはじめ、メルセデス・ベンツ CSLやBMW 8シリーズといった4ドア(5ドア)のクーペスタイルのボディを纏ったクルマの存在理由ってナニ?
メルセデス・ベンツ Eクラス、Sクラス・クーペ、BMW8シリーズ・クーペやレクサス LC、もっといえば、ベントレイ・コンチネンタルGTといった、Eセグメント以上の大型2ドア・クーペは、実用域の向こうにある、なんというかムダ・・・というか、ラグジャリィーだよね、というのがそのアピアランスを持って、あぁ、これってフツーに家族で乗るクルマじゃないよね、って万人に理解できるんじゃないかと思う。

しかし、このA7 Sportbackという、中途半端なサイズのクーペ・ルックのしかも4ドア(5ドア)とかって、どこか実用性を求めているにもかかわらず、ラグジャリィでしょ?的なクルマの立ち位置って、どうなんだろ?
アメリカ的な “プロムナード・カー” でもなく、伝統的なクーペでもない。
スタイリッシュもしくはスリークなクルマが好きだけど、家族や荷物を乗せなきゃならないし、でもいろいろな制約があって、1台のクルマで賄わなければならない、なんというか中途半端なクラスタに向けたクルマという解釈でいいのかな?

個人的には、2ドアでなく動力性能が同じか劣るなら、Eセグメントである必然性はなく、Dセグメント、つまりA5 Sportbackでイイかなと。
Eセグメント以上は、高級車のカテゴリィに属するとすれば、4ドア・セダンやワゴンといったショーファードリヴンとしての実用性、もしくは2ドア・クーペないしカブリオレといったラグジャリィな方向性がこのクラス以上のクルマのレゾンデトールじゃないかな。
かなり偏った考え方かもしれないけどね。

それでも、ファストバック・スタイルのルーフラインはエレガントで麗しい。

Hyundai IONIQ 5 N





HYUNDAI IONIQ 5 N
そしてコマーシャルモデル?の IONIQ 5 N を使ってのサーキット走行体験。
一度に走るのは、5台、そのうちフロントローの一台はインストラクターが操るペースカー。
つまり好き勝手に走ってイイ、ということではないということ。

“ソウルトロニックオレンジパール” と呼称されるスカーレット色の一台が僕にはアサインされた。
サイドシートには先ほどとは違うインストラクター氏が乗り込み、このクルマの特徴や各スイッチの使い方をサラッとレクチャーしてくれる。
BMWのiDrive 8シリーズと同じようなタブレットを2枚並べたようなワイドなスクリーンがフロントに設置されているが、はっきりいって機能が多すぎて何がなんだか・・・
でも、すべての操作がタッチディスプレイ操作しないとならないわけではなく、エアコン等の基本操作部分は独立していて日常的な操作性はそれなりに考慮されているようにみえる。
BMWのiDrive 8ときたら・・・

Hyundai IONIQ 5 NのベースになっているICONIC 5のデザインは少しファミリィカー的なファンシーさを感じさせるけど、IONIQ 5 Nはそこから大きく変化させ、いかにもパフォーマンス・カーだということをそのアピアランス、うまくスポーツ性をアピールすることに成功しているように感じる。
とてもデザイン性が高い、と個人的には思うかな。
Nマークがセンターにフィチャーれたステアリングホイール、Nモデル専用のシートやステッチ、ボタン類がオリジナルのICONIC 5とは結構違っているんだそうだ。
そういえば、ボディカラーだけではなく、エクステリアでも、Nマークの立体的な装飾やホイールのセンター・キャップ、ディフューザーにウイングレットなどなど、エクステリアがパフォーマンスカーとしてキチンとデザインされていて、その細かなコダワリはAMG、BMW M やAudi Sports、はたまたLEXUS Fあたりのパフォーマンス・モデルよりよほどコダワっている感じ。
いささかトゥー・マッチなような気もするけど、スペシャルなモデルとしての主張は充分発揮されてる。


で、ステアリングを握って、ピットロードからレーストラックへアクセルを踏み込む。
なんの変哲もなく、といえばアレだけど、特別にナーヴァスなアクションもなく、フツーに、というか、その強大なトルク&パワーなりに一気に加速していく。
EVなので、本来はエンジンやエクゾーストなどのノイズはないはずなんだけど、車内には盛大なエクゾースト・ノートが響きわたる。
これは車内に設えられたレゾネータから発せられるらしい、そしてそのノイズはハイチューンの4気筒エンジンを模して作られたサウンドチューンだとブリーフィングの時にいってたっけ・・・


IONIQ 5 N をレーストラックで走らせてみ、これといったドラマもカタストロフィもなかった。
こう書くと、ものすごくツマらなかったように聞こえるかもしれないので補足しておけば、極めてフツーに走らせることができた。
650馬力 / 740Nmnという出力を備えたクルマであるにも関わらず。
それって、スゴいことなんじゃないかと思うんだけど、どうだろうか?
レシプロ・エンジンのクルマで、これくらいのトルク&パワーがあるクルマをフツーに走らせることができるのだろうか?
そのパフォーマンスを持つレシプロ・エンジンを積んだクルマをドライヴしたことがあまりないので、どっちがどうと、ジャッジできるほど経験がナイのがなんとも。。。

まぁ、なんにせよ、フツーにDセグメントあたりのSUVを走らせるようにレーストラックを走らせることができた、そういうこと。
BMWでいえば、M一桁モデル(M3とかM4)のようなスパルタンさはなく(とはいっても、現行G世代のMはどれもそれなりに日常使いできそうなほどフレンドリィになってはいるけど。)、Mパフォーマンスモデル(M340iとかM440i)くらいのフレンドリーさで、650馬力を愉しめる感じといえば、なんとなく伝わる?
この表現、同乗して下さったインストラクター氏も、うんうんと笑いながら同意してくれたんだが。

これには、IONIQ 5 N が履いていたピレリーのP ZEROの特性によるところも大きいのだろう。
ドリフト体験の時にも感じていたのだけど、レーシング・アスファルト上においてタイヤの剛性と限界グリップが高い感じではなく、どちらかといえば柔らかく、なだらかにグリップの限界を越えていく感覚で、滑り出しがダルでコントロールしやすく、それが安心感に繋がっているような気がする。
この僕のコメントに対し、インストラクター氏も、限界グリップそのものよりも、限界を超えたときのコントロール性にフォーカスしてこのクルマとタイヤをセッティングしてある、と説明してくれた。
なるほど・・・

EVならではのリニアな加速と強力な減速、細かな電子制御による車体コントロール、動的バランスにおいて、レシプロ・エンジンのクルマではもはや到達できない領域なんじゃないだろうか。

・・・まぁ、それが好きかどうかは別にして・・・

キレイに晴れた5月の空の下、クローズドコースで気兼ねなくクルマを走らせる。
こんな楽しいことはなかなかない。

いいイベント、いいクルマでした。

Never just drive.







IONIQ 5 N Track day by HYUNDAI
Hyundaiのパフォーマンス・ブランド “N” そのBEV、IONIQ 5のハイパフォーマンス・ヴァージョン、IONIQ 5 Nの日本導入のプレ・イベントとして開催された “IONIQ 5 N Track day by HYUNDAI” に招待していただいた。

よく晴れた金曜日の午後、首都高速道路のいつもの渋滞を抜け東京湾の下を抜け、対岸の袖ケ浦へ。
これくらいの距離に気軽に走ることができるサーキットがあるって、とてもステキなことだと思う。

袖ケ浦フォレストレースウエイの北ゲートから入りトンネルをくぐるとそこはもうサーキット・パドック。
指示に従いクルマを駐め、促されるまま研修棟ガレージに入ると、そこはHyundaiがリリースする新しいクルマのために設えられた世界だった。

Hyundai、IONIQ 5、そして “N” のブリィーフィングをひとしきり受け、さぁ、サーキット・エクスペリエンスへ。
先ずは、パドックに水を撒き低ミュー路に仕立て上げられたスペースでのドリフト体験と実践。
ヘルメットとグローヴ、そしてドライヴィング・シューズを装着して、ロールケイジが組まれたドリフト仕様?の “IONIQ 5 N” へエスコートされサイドシートに収まる。
デモンストレイター氏と短い挨拶を交わすと、彼は一気にスロットルを 踏み込んだ。
このスペシャルな個体が、どれほどの軽量化を施されているのか聞き忘れたのが残念だけど、そのスタートダッシュはちょっとした事件だった。

そしてスタンダード仕様? IONIQ 5 N へ乗り換え今度は自分でステアリングを握り、低ミュー路でのローンチコントロールを効かせてのフルスロットルからのフル・ブレーキング、パイロンを使ったドリフト・コントロール。
おぉッ? これはちょっと驚いた。
これまでこの手のイヴェントにいくつか参加させていただいた経験もあり、冬の女神湖での氷上ドリフト練習だったりと、自分のクルマだったり、いくつかのメーカーのハイパフォーマンス・モデルで低ミュー路でのドリフト体験をしてきたけど、この IONIQ 5 N はそれらどのクルマよりドリフトがしやすく、そしてコントロールしやすいクルマだった。
僕がステアリングを握ったのは、スタンダード、つまり市販バージョンの IONIQ 5 N、先述のサイドブレーキがついたドリフト仕様のスペシャル・バージョンではない。

で、何に驚いたといえば、ドリフトさせた時の IONIQ 5 N の穏やかなコントロール特性。それは650馬力 / 740Nmnそして2200kgオーバーの車重から受けるイメージからすると拍子抜けするくらいフレンドリィに操縦できる。
実際に走らせているときからなんとなく感じていたことだけど、これって、もしかして、EVだからなのか?
きっとそうだ、これはEVならではの操縦性なんだ、と今になってハッキリと思う。
レシプロエンジンのように、回転数を上げるにしたがってプログレッシヴに立ち上がるパワーとトルクとは違う、アクセルを踏んだ瞬間にラグなくリニアに立ち上がるパワーとトルク、それはドリフトに持ち込む時も、一瞬にしてスライド状態に移行できる。しかしそれ以上に肝心なのは、スライドしているときのコントロール。これがレシプロエンジンだとエンジンの回転数の増減によってトルクが変わってくるから、一定の状態でスライドさせるのって結構ムツカシイ。
それがEVだといつでも一定のパワーとトルクをリニアに呼び出せるから、エンジンの回転数とか過給器の効き具合とか、ギアポジションとか考える必要がなく、アクセルとステアリングだけに意識を集中することができることになる。
つまり、レシプロエンジンだと、いくつもの要素を常に考えながら(もしくは無意識にアジャストしながら)ステアリングとアクセルを操作しないとならいけど、それがEVだとステアリングとアクセルのことだけ考えればいいから、そのぶん余裕が生まれる、もしくはその処理能力の余裕を他ごと、たとえば周囲を見わたしたり、次のパイロンへのアプローチを考えたりとかに使うことができる。
それはドライヴァーへのストレスを減少させ、リラックスきることによりリスクを少なくでき、より安全性が上がると。

もちろん、 IONIQ 5 N のサスペンションとかディファレンシャルのセッティングがとか、メカニカルと電子制御系のチューニングが優れているということもあるんだろうけど。。。

EVならではのアドヴァンテイジ。
これずいぶん前にテスラのモデルSを初めてドライヴした時にも感じた。
エキゾーストノートのない暴力的な加速とトルク感、慣れは必要だろうけどワンペダルで出し入れできるスピード・コントロール。
これが、このプライスで実現できるなんて、スゴいことなんじゃないか?

レシプロエンジンの時代はそのうち終わるんだろうな、当時そう感じた。
今回走らせた IONIQ 5 N の膨大な電子制御によるコントローラブルな特性と動的質感、これってEVならではなんだろうな、と。。。