Hopkinsville

ホプキンズビル、ケンタッキー州にある人口3万人ほどの小さな町。
日本人の多くには馴染みのない地名なのではないかと思う。
2017年、この夏の皆既日食のことを知るまでは、僕もまったく知らない町だった。
という以前に、ホプキンスビルのあるケンタッキー州にアシを踏み入れたこともなかった。
真夏に訪れたその小さな町は、アメリカ中南部の小さな町の趣そのままで、僕にとっては、かつて住んでいた南部の町、ニューオリンズの暑さと湿気を感じさせるある種の懐かしさに満ちていた。

普段は本当に静かな町なんだろう。
しかし、アメリカ合衆国で観測される日食としては38年ぶり、しかも北米大陸を横断するように観測できるのは99年ぶりという、壮大なスケールの自然イベントにおいて、このホプキンスビル周辺は、日食期間中でもGE(Greatest Eclipse)と呼ばれる、皆既日食が最大となるポイントになっているということで一躍全米中の注目の町となったばかりに、ソレ目当ての観光客が大挙して訪れて、一種のお祭り騒ぎのような盛り上がりをみせていた。
・・・まぁ、僕もその一人ではあるんだけど。。

町の中心部では皆既日食当日に向けて、道路を封鎖して様々なイベントを開催していて、ここぞとばかりにTシャツや記念グッズを扱うストリートベンダーが観光客によって賑わっていた。

それはそれはとても蒸し暑い、8月のアメリカ中南部らしい1日だった。

Tanglewood

 

 

 

タングルウッド音楽祭。
マンハッタンから車で3時間弱、マサチューセッツ州の高原というか、山の中。
いうなれば、ボストンあたりの人々の夏の避暑地といったところだろうか。

ここは、BSO(ボストン交響楽団)の夏の活動拠点になっていて、キレイに整えられた芝生の広場に野外ステージが常設されている。

小澤征爾さんがBSOの音楽監督に就任する前に所長を務めていたのが、ここのミュージック・センターであり、彼の名を冠したホールもあったりします。

お昼の野外コンサート。
曲目は、ジョン・ウイリアムズのMarking(ワールド・プレミア)、チャイコフスキィのヴァイオリン協奏曲、インターミッションを挟んでベルリオーズの幻想協奏曲。
前半2曲のヴァイオリニストはアンネ・ゾフィー・ムター。
これは観ないわけにはいかない。
ニューヨークにいれば、彼女の演奏を聴くこともあるだろう、なんとなくは思っていたけど、なぜか今日までその機会は訪れなかった。

シャツもトラウザースも真っ白、上着を羽織らず、夏の爽やか演出の楽団メンバー。
しかし指揮者のアンドリス・ネルソンスだけが黒服なのはなんでなんだ。
鮮やかなピンクのマーメイドスタイル・ドレス(彼女のトレイドマーク)を身に纏ったアンネ・ゾフィー・ムター、そのヒトが登場すると、舞台はたちまち華やいだ空間になっていた。

常設とはいえ野外劇場、音響的にどのこうのいっても始まらない。
この夏の高原と煌びやかな音楽の雰囲気を愉しむことにしよう。

今回はお昼間のコンサート。日差しは強かったけど、劇場のシェイド下はとても快適だった。
10年前にもここに来たことがあるのだけど、その時は夜のコンサートだった。8月とはいえ陽が落ちると凍えるよう寒さ、音楽を聴くどころではなかったな。
それでも、夜のコンサートのほうが、ここならではといった雰囲気はあるかな。

タングルウッドの雰囲気を愉しむには、芝生広場に陣取って、のんびりと暮れていく真夏の高原の空気に触れながら、夜のとばりと音楽を、ワインに肴を飲りながら愉しむ。
ブランケットとダウンで温かくして。

同じ野外コンサートとはいえ、ニューヨーク・フィルハーモニックのセントラルパーク公演とは、客層も雰囲気もまったく違っていて、それぞれの街の雰囲気を映し出しているようで、そのコントラストがなんとも面白かった。